イチローの引退試合の観戦記その2です。
※前回の記事はこちらです。
https://ikiteru.net/2019/03/26/post-2394/
目次
イチロー引退試合の試合中
前回の記事ではイチローの引退試合の6回までを書いたので7回から書きます。
イチロー引退試合 7回
7回表、8番のヒーリーからの打順。
ネクストバッターズサークルにイチロー登場で東京ドームに歓声があがります。
そして、ヒーリーが2塁打を打ち、ノーアウトランナー2塁のチャンスでイチローに打席が回ってきました!
ただ、オープン戦から不振の打率0.00の9番バッターに1点差リードの7回に打席が回った、ということを「イチロー」であることを抜きにして考えると、ここは代打かもな・・・
と、正直なところ思いました。
メジャーでは日本の様に、公式戦の中で引退選手に花道を作るようなことはしませんし、ましてやまだシーズン始まったばかりの開幕シリーズです。
でも、
イチローへの代打は無しで、そのままバッターボックスにイチローが入りました。
東京ドーム全体がスタンディングオベーションに包まれ、大盛り上がりです。
ここで警備員から「試合の途中に座席で立ち上がるのはご遠慮くださーい」と注意があり、一部の人は反応して座りそうになりますが、ほとんどの人は気にせず立ちながらイチローに声援を送ります。
警備員もさすがに途中からはあきらめたようです。
東京ドームの4万人がイチローを応援する気持ちで一つになる感覚でした。
でも、ここでも残念ながらイチローは打てません。
見逃し三振。
一瞬会場全体ががっかりした気持ちになりましたが、「きっとこれがイチロー現役最後の打席」とみんな思っていたからなのか、すぐにイチローへの感謝の拍手に変わります。
この後、ゴードンのヒットやデットボール、犠牲フライなどで1点追加して、4-2のマリナーズリードで7回表が終了。
そして、7回裏こそイチローの交代場面が訪れると思ったのですが・・・・
そのまま交代無しでイチローはライトに残り試合が再開されます。
しかも、私は見逃してしまいましたが、7回裏前の守備練習でイチローは背面キャッチを披露してくれました。
そういえば、セブンスイニングストレッチのTake Me Out To The Ball Game は無かったです。
7回裏はアスレチックスが満塁でデービスのヒットで4-4の同点に追いつき終了。
ライトからベンチに下がるイチローです。
イチロー引退試合 8回表
8回表のマリナーズの攻撃。
6番からの打順で7番ベッカムにヒットが出て、同点2アウト2塁のチャンスでイチローに打席が回ってきました。
この打席も、試合終盤の一打勝ち越しのチャンスなので「本当は代打じゃないの?」とも思いますが、そのままイチローが打席に入ります。
試合後にサーベイス監督が言っていましたが「このシチュエーションならイチローは何かやってくれそうだ」という期待の中、東京ドームはここまでで一番の盛り上がりに。
また警備員が「試合の途中に座席で立ち上がるのはご遠慮くださーい」と注意に来ますが関係ありません。
東京ドームがイチローコールと歓声で包まれます。
この頃にはイチローが引退を決めていることをみんな知っていたはずなので、イチローへの歓声には応援の気持ち、感謝の気持ちと色々な感情が折り混ざったものとなっていました。
ただ「打ってほしい」という以上の気持ちが込められた4万人の声が、イチローに向けられていました。
私も含めて、自分のイチローへの感情をイチローに届けたいという思いがみんなにあったのではないでしょうか。
でも・・・・残念ながらこの打席でもイチローは打てませんでした。
ショートゴロでギリギリのタイミングでアウトになり、3アウトチェンジ。
これが本当にイチローの現役最後の打席となりました。
イチロー引退試合 8回裏 イチロー交代
そして8回裏。
イチローがライトの守備位置に向かう現役最後のシーンです。
どんな想いで守備位置に向かったのでしょうね。
最後のイニング間のキャッチボールの様子です。
イチローの交代が近づいていることをみんなわかっているので、皆の視線がイチローに釘付けです。
そして、ついにその瞬間が訪れました。
一度ライトの守備位置に付いたイチローがベンチに向かって走り出します。
普通の試合では無いことですが、イチローが交代することを伝えるアナウンスが流れ、セレモニー風の音楽も流れ出しました。
Legend. pic.twitter.com/CgnaEpmLYP
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
イチローの引退について、正式に場内でアナウンスされたわけではありませんが、この光景はどう考えても引退する選手に向けた最後の花道です。
それが何を意味するのか皆わかっているのでスタンディングオベーションでイチローを送り出します。
There's nothing like baseball. And no one like Ichiro. pic.twitter.com/MTtGlkgCOi
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
拍手で写真がブレブレですが、ベンチに戻るイチローです。
ベンチ前でメンバーと抱擁するイチロー。
日本で現役のイチローを見ることができるのはきっと最後だと思って、この試合を見に来ましたが、まさかイチローの現役引退試合になるとは思ってもいませんでした。
スクリーンに映るイチローの表情が終始笑顔であることに救われますが、「50歳まで現役を続ける」ことを公言していたので、涙を見せないからこそ、そこに悔しい思いが隠されているのではと感じました。
There's crying in baseball. 😢 pic.twitter.com/sL5S7ET0Yn
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
誰よりも努力をしてきたイチローに対して、心からの「お疲れさま」と「ありがとう」の気持ちを込めた拍手を送りました。
スコアボードのメンバー表にはしばらくイチローが残っていましたが。
しばらくして、ついにイチローの名前がスコアボードから無くなりました。
イチロー引退試合 9回~12回
イチローが交代した8回裏開始が21時半頃で、その時は4-4の同点。
その後、両チーム得点が入らず延長線へ。
ここで、場内のスクリーンに「延長戦は決着が付くまで行われます」の表示がありました。
そういえば、メジャーリーグには引き分けのルールが無いので、延長戦は決着が付くまで何イニングでも何時間でも行われるのでした・・・
10回表の時点で22時を過ぎていましたが、イチローの引退試合を見届けたい思いもありますが、終電が気になってきます。
延長戦は終電時間との戦いでもありました。
それでも、おそらくみんな最後に少しだけでもイチローがベンチから出てくると期待して待っていたんだと思います。
その後、試合は12回表にマリナーズが1点を追加して、ちょうど23時頃になんとかマリナーズ勝利で試合終了。
試合終了後、メンバーとハイタッチするためにイチローが再登場。
2-0.
The Mariners finish off the sweep of the A’s on an unforgettable night in Tokyo. FINAL: 5-4.
See you in Seattle. #TrueToTheBlue pic.twitter.com/G7Qd1DsZPp
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
でも、通常の試合終了後以上のことはここでは起こらず、日本での開幕シリーズ限定のヒーローインタビューも、イチローではなく試合で活躍したディー・ゴードンが登場。
たぶんヒーローインタビューでのイチローの登場を期待して待っていた人もいたと思いますが、試合で活躍していないのに、イチローがヒーローインタビューにでてきて引退のあいさつするっていう演出はちょっと興ざめしたかも。
もしもヒーローインタビューにイチローが登場していたら、この後の感動的なシーンは起こらなかったので、読売なんかが安易なセレモニーを用意しなくてよかったです。
イチロー引退試合 試合終了後
試合が終わったのが23時頃。
試合後、イチローが登場したのはメンバーを迎えるハイタッチのシーンだけでした。
試合後に何か特別なセレモニーは一切用意されていなかったようで、試合終了後はグランド整備などが淡々と行われていましたが・・・
私も含めて「待っていたら最後にイチローが出てくるかもしれない」と、東京ドームに残った数万人からイチローコールと手拍子が自然発生します。
その頃イチローは・・・・
The moment he told his teammates.#ThanksIchiro pic.twitter.com/SKu4by9bX5
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
チームメイトに引退の報告をしていたそうです。
一方、東京ドームの観客席では何もアナウンスが無いので、待っていても本当にイチローが出てくるかはわからない状況でしたが、それでも皆帰らず、イチローコールと手拍子を続けます。
終電も近づきますが「やっぱり最後のイチローに会いたい!」という想いから、私も最後まで見届けようと心に決めました。
でも、イチローコールと手拍子が10分続いても、特に何も起こりません。
「これはもう待っていてもイチローの再登場は無いかも・・・」
と思った人もたくさんいたと思いますが、それでもほとんどの人がイチローコールと手拍子を止めず残っていました。
何も約束は無い中、東京ドームの数万人がイチローの再登場を信じ、願うという気持ちで一つになる不思議な感覚でした。
そして、イチローコールと手拍子が20分続いた頃・・・・ついに、イチローが再登場しました!
Words can't describe the scene at the Tokyo Dome over 30 minutes after tonight's game ended.
So here's 3.5 minutes of unedited footage from Ichiro's curtain call. #ThanksIchiro pic.twitter.com/Vsbvk5j5MR
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
イチローの再登場に嬉しい気持ちと同時に、勝手に残って声援を送ったみんなの気持ちに応えてくれたことへの感謝の気持ちが湧きました。
後のイチローの引退会見での、
「今日のあの、球場での出来事…あんなもの見せられたら…後悔などあろうはずがありません。」
というコメントは、あの時イチローを待っていた私たちも同じでした。
事前に用意されたものではなく、その場にいた人の空気、想いがあって実現した感動的なシーンでした。
イチローの引退を私たちが後悔するというのはおかしいですが、
「最後に自分たちの声に応えてイチローが出てきてくれた」
ことで、イチローと引退の瞬間をきちんと共有することができて、引退を受け入れることができたという人も多かったと思います。
最後に待っていた人の声に応えてくれたイチローに本当に感謝です。
👏 I-CHI-RO! I-CHI-RO! I-CHI-RO! 👏#ThanksIchiro pic.twitter.com/L4EhraNqTX
— Seattle Mariners (@Mariners) 2019年3月21日
イチロー 引退おめでとうございます
イチローの引退試合を再登場まで見届けて思うのは、
「イチロー引退おめでとうございます」
は、全然失礼ではない、ということです。
メジャーリーグで、限界まで現役を続けようとする選手は、最後は所属先が決まらずに、いつのまにか引退していたというのがほとんどです。
50歳まで現役を目指すということは、所属チームが見つからない状態であっても、未所属状態で声がかかる日を待ちトレーニングを続ける日々が続いて、実質引退状態になった後にひっそりと引退発表をする可能性があったと思います。
たぶん、イチローはそうなることを覚悟の上で「50歳まで現役を目指す」と語っていたのだと思います。
用意されたものではなく、自然発生で引退セレモニーが起こり、日本のファンに愛されていたことを実感しての引退。
イチローにとってこれ以上無い形で引退することができたのではないでしょうか。
もちろん、最後にヒットを打つこともできず、努力が報われなかったからこその引退なので、そのことはおめでたくありませんが、
「素晴らしい引退の瞬間を迎えることができて、イチロー本当におめでとう!」
と私は思います。